弁護士法には

「弁護士会が,弁護士からの申出に基づき,
公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる」

との規定があります。この照会を一般に,弁護士法照会とか,弁護士会照会といいます。

この照会に対する報告拒絶に罰則はありませんが,照会を受けた団体には公法上の報告義務があるとされているため,照会事項の内容にもよりますが,報告を受けられることは少なくなく,弁護士にとって有効な証拠収集手段となっています。

もっとも,照会を受けた団体が報告に応じることが常に問題がないとも言い切れません。古くは,市長が弁護士会の照会に応じて市民の前科を報告したことが公権力の違法な行使に当たるとして,国家賠償が命じられたことがあります(最高裁昭和56年4月14日判決)。

最近でも,税理士法人が弁護士会照会に応じて納税義務者の確定申告書写しを提供したことが,守秘義務に違反する違法な行為であるとして,代表税理士の不法行為による損害賠償責任が認められた下級審判例が出ました(大阪高裁26年8月28日判決)。

この件はまだ上告審で争われていますが,このように照会先の団体が責任を負うことになるとすると,照会先が委縮し,弁護士・弁護士会にとって報告を得られにくくなることが懸念されます。また,仮に報告が違法行為になるとすると,それを求める照会を行った弁護士会の責任も問われるおそれがあります。

昨今の個人情報やプライバシーが強く意識される社会の中で,刑事罰による強制力のない弁護士会照会が有効な証拠収集手段として機能し続けていくためには,照会先からの信頼が不可欠です。そのためには,照会先が損害賠償責任を負うようなことがないよう,弁護士会内部でも,弁護士の照会申出が受任事件との関係で不必要ないし不相当な事項に及んでいないか,今まで以上に気をつけて見ていく必要があると思います。