東日本大震災後に,いわゆる二重ローン問題対策としてできた制度として,「個人版私的整理ガイドライン」(別名「被災ローン減免制度」)があります。

個人版私的整理ガイドラインは,周知が浸透しなかったこともあって,思ったほど多くの被災者に利用されていません。

しかし,本来は,自己破産しなくて済むなど,被災者が再出発するためにはメリットの多い制度です。

そこで,今後発生する災害においても,東日本大震災の個人版私的整理ガイドラインと同様の仕組みで債務が整理できるよう,このたび,「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」自然災害債務整理ガイドライン)という制度ができました。

自然災害債務整理ガイドラインとは?

平成28年4月1日から適用が開始されました。

基本的なルールは個人版私的整理ガイドラインとほぼ同じです。手続着手後の具体的な債務整理手続に当たっては,登録支援専門家(弁護士等)の支援を無償で受けられるというのも変わりありません。

しかし,個人版私的整理ガイドラインには,債務整理を実施するための第三者機関(個人版私的整理ガイドライン運営委員会)が存在したのに対し,自然災害債務整理ガイドラインには第三者機関が存在しないという相違点があります。その結果,自然災害債務整理ガイドラインでは,以下の2つの相違点が生じます。

自然災害債務整理ガイドライン 2つの相違点

  1. 手続に着手するためには,元金総額が最大の債権者(主たる債権者)にその旨申し出て,同意を得なければなりません。
  2. 債務整理を成立させるには,簡易裁判所の特定調停を利用しなければなりません。

自然災害債務整理ガイドラインが適用される災害とは

このガイドラインは全ての災害に適用されるわけでなく,災害救助法の適用を受けた自然災害に限られます。もっとも,災害救助法は,被災区域の人口と住家が滅失した世帯の数に応じて適用される他,「多数の者が生命又は身体に危害を受け,又は受けるおそれが生じた場合」などにも適用され,実際は,東日本大震災のような大規模災害に限らず,毎年起こる台風,大雨,大雪,突風,噴火等の災害の多くに適用されています。

先日発生した「平成28年熊本地震」にも適用されました。

また,ガイドラインの適用開始は平成28年4月1日からですので,熊本地震にも適用されるのは当然ですが,それだけでなく,その前の平成27年9月2日以降に災害救助法の適用を受けた自然災害に適用されます。したがって,平成27年の台風18号や21号の被害については適用されることになります。

東日本大震災被災地の弁護士として

私たち被災地の弁護士の多くは,個人版私的整理ガイドラインによる債務整理案件に接し,ガイドラインについての知識と経験を備えてきました。類似の構造を有する自然災害債務整理ガイドラインの運用にも,比較的スムーズに対応できるように思います。また,今後,他県で大規模災害が発生し応援が必要になった場合も,自然災害債務整理ガイドラインの適用については,協力できることが多いように思います。