弁護士が利用できる有力な証拠収集手段として,弁護士法23条の2に基づく「照会申出」があります。申し出を受けた弁護士会は,照会の必要性・相当性があると判断すれば,照会先である公私の団体に対して照会書を発します。

しかし,この照会に対し,必ず回答が得られるわけではありません

照会先には,弁護士会からの照会に応じる公法上の義務があると解されていますが,一方で,正当な理由がある場合は回答を拒絶することもできると解されているからです。

それでは,弁護士が債権者から差押手続の依頼を受けたところ,債務者が転居していると分かり,差押手続を進めるために転居先を教えてもらおうと,日本郵政への照会を申し出た場合はどうでしょうか。

このような申出を受けて弁護士会が照会を行っても,これまで日本郵政は,郵便法8条2項の守秘義務を理由に回答を拒絶してきました。

しかし,最近になって,このような回答拒絶により損害を被ったとして,依頼者と弁護士会が日本郵政を訴えた事件で,弁護士会の賠償請求を認める裁判例が出ました(依頼者の請求は認められませんでした)(名古屋高裁平成27年2月26日判決)。

認められた賠償額は1万円ですが,これを機に,日本郵政から回答が得られやすい環境が整うとよいと思います。

なお,仮にこの判決が確定したとしても,常に転居先の照会が認められるわけではありません。照会は,弁護士が受任した事件について必要な事項の報告を求める行為であり,報告を求める必要性は,まさにその事件ごとで異なるからです。